きっとこれは眠れない恋の証明。
「わかったよ。俺もその方が安心する」
「え…良いんですか」
自分で頼んでおいて、意外にもあっさりと承諾されて少し拍子抜けた。
仮にも羽水プロダクションと芝波プロダクションは同じ芸能プロダクションとしてライバル関係にあるというのに。
「良いよ、俺もその方がいいと思う。寂しいけどな。俺はとりあえず佐山でも呼んで我慢しとくよ」
佐山、というのは、本来羽水社長の秘書になる筈だった人だ。羽水社長は何かと口の多い佐山さんの事が苦手らしく、だから急いで私を自分の秘書として据えた。
「それに、早瀬が俺に何か頼み事するのとか初めてだしな」
「そうでしょうか」
「そうだよ。でもまぁ少しだけ意外だった。俺はともかくとして、どうしてそこまで?」
「………。」
好きな人の好きな人だからです。
喉元まで迫り上がったそんな言葉は当然口に出来る筈もなく、直前になって抑えた。
──俺はともかくとして。
芝波社長を好きな羽水社長が芝波社長に手を焼くのは当然として、という意味なのだろうと察する。羽水社長も口にはしないがそれを私に隠すつもりもないようだ。