きっとこれは眠れない恋の証明。

「あの、羽水社長」

「ん?」

「私が…芝波社長に掛けた言葉は、間違っていたと思いますか」

羽水社長に、問いかけても仕方のない事をついそんな風に尋ねてしまう。




───黒瀬さんは死んでません。生きています。

必ず目覚めます。だって…私がもし黒瀬さんの立場だったら死んでも死にきれない、絶対に、死んでも目を覚まします。

…だって、こんなに泣いている芝波社長を放ってあの黒瀬さんが眠ったままなんてあり得ない。




医者の言葉に絶望したように泣き、薬が欲しいと我を失うほどに取り乱していた芝波社長に私がかけた言葉だ。

決して自分の心に嘘をついて言った言葉ではない。本心だった。

本当に、こんなに泣いている芝波さんを放って黒瀬さんがずっと目を覚さないなんて事はないと思ったのだ。…その時は。


でも今は、無責任な発言をしてしまったのではないかという悔念を抱いている。

医学的な事なんて何もわかっちゃいないのに、ただ感情論だけで約束も出来ない未来を言い切ってしまった。

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