きっとこれは眠れない恋の証明。
黒瀬さんの意識が戻ったら、きっと羽水社長の恋は叶わない。
でも、羽水社長は黒瀬さんが目覚めると信じてそれを願っている。
私も羽水社長も、芝波社長に泣いていて欲しくないのだ。
私は羽水社長の事が好きだ。
今だって髪に触れられて、全身が心臓になってしまったみたいにドキドキしてる。
…だから、私だって羽水社長に泣いて欲しくない。傷つく所は見たくない。
でも、だからといって黒瀬さんにずっとこのまま眠っていて欲しいなんてそんな事は微塵とも願えない。
自分の心が矛盾でぐちゃぐちゃになる。
でも今は。
───うちの秘書がいつまでも俺の元に帰ってきてくれなそうだからな。
羽水社長のその言葉が嬉しくて、胸が一杯になる。
うちの秘書と呼んでもらえて嬉しい。
裏返せば早く帰ってきて欲しいともとれる言葉をかけられた事が嬉しい。
もう、それだけで報われるような気がして、幸せだと思えた。