きっとこれは眠れない恋の証明。

そんな事があってから、こうして京が私のマンションの部屋に来て夕食をつくってくれたり、掃除などのたまった家事をしてくれるようになった。

本来秘書の仕事の中に上司のプライベートでの世話なんてものは含まれているはずもないが、京は秘書である前に幼なじみであり、体が弱っていたこともあって頼りきってしまっている。
 
───食事の時くらい、仕事の話はやめよう。

そして昨日、京がそんな事を言い出したのは、きっと私の精神や体調を気遣っての事だろうということは分かっていた。


「でも、京ってほんと昔から料理上手だよね」

「別に普通だろ。桜がしなさすぎるだけだ」


そう言って京が本日2回目のため息をついた。
しなさすぎるという言葉がうっと胸に刺さる。
確かに私は昔から料理をする事が大の苦手で、家をでて一人暮らしを始めてからはお惣菜やお弁当屋さんに頼る毎日だった。


「教えようか?料理」

そう京に尋ねられたが、ほんの少しだけ考えた後すぐに首を横に振った。

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