きっとこれは眠れない恋の証明。

近くの駐車場にいびつに駐車をしたまま、休憩だといって羽水社長に渡された缶コーヒーを受け取った。

「そういえば、早瀬は元気にしてる?」

「え…」

羽水社長のそんな言葉に少し違和感を覚えた。

「え、早瀬ちゃんと会っていないんですか?」

「ん?あぁ、最近は会ってない」

そんな羽水社長の言葉に目を見張った。
二人は、早瀬ちゃんが私の秘書になった後でもこまめによく会っていた筈で…

でもそれが、いつの間に"あぁ、最近は会ってない"状態になっていたのかと驚いて目を剥く。

「元気ですよ。最近はよく仕事終わりに事務所のキッチン勝手に使って、二人でお菓子作ったりとかしてるんです」

「へー、楽しそう」

そういって羽水社長が小さく笑う。
その笑顔はどこか寂しげだ。

…きっと私が知らないところで、二人の間には何かがあったのだ。

そう察したけれど、それを聞き出すような権利は私には無い。
< 209 / 233 >

この作品をシェア

pagetop