きっとこれは眠れない恋の証明。
「早瀬ちゃん、話があるの」
今日の分の仕事を終え、いつものように私にコーヒーを入れてくれるために給湯室に向かおうとする早瀬ちゃんを、そう言って呼び止めた。
「どうされました?」
そう言って小さく首を傾げる早瀬ちゃんに本題を告げた。
「早瀬ちゃんを、羽水社長の元に戻そうと思って」
「………。」
早瀬ちゃんの表情が一瞬ポカンとし、やがて事を理解したのか、そのまま凍りつくように固まる。
そんなの困る。その顔には、私にはそう書いてあるように思えた。
「早瀬ちゃんが側にいてくれたおかげで、私、やっと前を向けるようになったの。
羽水社長にも、同じくらい凄く感謝してる。
いつか京が目覚めた時に、たくましくなったな、大人になったなって褒めて貰えるような自分になって、京の事待っていようって思えるようになったの。
早瀬ちゃんや羽水社長がいなかったら私は今こうして立ち直れていないと思うし、仕事も頑張れてなかったと思う。
京の事も…きっと諦めて、信じてあげられてなかった」
「…だったらどうして。私、何か芝波社長に迷惑をかけるような事しましたか?」