きっとこれは眠れない恋の証明。
勢いでここまで来てしまったが…。
あまりに早い展開に心が追いつかない。
だが受話器を受け取らない訳にもいかず、恐る恐るといった手つきで受け取り、それを耳に当てた。
「も、もしもし」
『…来てるんなら、さっさと社長室まで来い』
受話器越しに聞こえる羽水社長の声は不機嫌で。
物凄く久しぶりに聞く羽水社長の声に耳を擽られているような気分になって、思わず泣きそうになった。
「おせーよ、馬鹿」
社長室に入ると、羽水社長に抱きしめられ、耳元でそう叱られた。
「俺からの連絡全部無視するなんて、早瀬、いつからお前はそんなに偉くなったんだ?」
「…ごめんなさい」
切ないくらいに懐かしい匂いに包まれて、涙を我慢出来なかった。
ごめんなさいと謝る声は情けなく震える。
女性として羽水社長に愛して貰える事はなくても、それでも、羽水社長にとって必要な人間になる事はできる。
…だったら私は、羽水社長に必要とされる人として、あなたの側にずっといたい。
私、いつからこんなに泣き虫になったんだろう。
優しく抱きしめてくれる羽水社長に甘えるように、私はその胸に顔を埋めた。
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