きっとこれは眠れない恋の証明。
「京、どっちが似合うと思う?」
「そうだな…両方似合うと思うが」
それ一番言われて困る返しだからとまた小さくむくれると、そんな私に気がついた店員さんがどちらも素敵ですからねとフォローしてくれる。
「ドレスは、結婚式に着ていかれるんですか?」
「あ、いえ。今度パーティーがあるので、それで」
「あらぁ、そうなんですか。
今の時期のパーティーというと、大学の卒業パーティーとかですか?」
そんな店員さんの言葉に、私よりも先に京が吹き出した。
普段あまり笑わないのに、こういう時だけ吹き出したりするのは、やっぱり京は意地悪だと思う。
「ごめんなさい、違ってましたか?」
「いや、そうなんです。
彼女、今年で大学を卒業するもので」
(ん…!?)
爽やかな顔をしてサラりとそんな嘘をつく京に内心で大きく抗議を申し立てる。
「まぁやっぱり。ご卒業、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます。あはは…」
この歳になってもうかけられるはずのない言葉に躊躇いながらも、ありがとうございますと返す。
店員さんに罪は無い。
結局最初は迷っていたドレスも、せめてもの足掻き心で紺色の大人っぽい方のものに決め、
ドレス用のハイヒールも普段履いているものより数センチ高いものを選んだ。
「桜、貸して」
京にそう言われ、ドレスを手渡す。
「そっちも」