きっとこれは眠れない恋の証明。
そう言って小町さんは部屋を後にした。
「わぁ、すごい豪華ですね」
テーブルに並べられた沢山の料理をみて、思わず目を丸くする。
「驚いた顔も可愛いね、お嬢さん」
「…からかわないで下さい」
本当は少し気にしていて、うまく笑えずに微妙な表情で返した。
「ごめんごめん、可愛くてつい」
砂川さんはよく可愛いと言ってくれるけど、サラっとそういう事を言えるのはきっと大人の余裕というものなのだろうなと思う。
「よし、じゃあ今日は仕事の事は忘れて楽しもうか」
「はい」
そう言ってグラスを持ち上げた砂川さんに合わせて、私も乾杯しようとジュースの入ったグラスを手に取って──…一瞬固まった。
(あれ…?)
てっきり仕事の相談事があるものだとばかり思っていたせいで、きょとんとしてしまった。
「ん、どうしたの?」
「あ、いえ、てっきりお仕事のお話があるのかなって思っていたので少しびっくりして。倉掛君のデビューの事とかうちの黒瀬の事とか」