きっとこれは眠れない恋の証明。


「あー、やっぱり忘れられてたかぁ。羽水翔って聞き覚えない?」

「えっ……」

──羽水翔。

ずっと目の前にいる人を"羽水社長"とばかり認識していたから、初めてフルネームを心の中で繰り返す。

聞き覚えのある名前。
確かにどこか耳に懐かしい。

…まさか。

「翔…君?」

信じられないといった気持ちでその名前を口にする。すると、羽水社長は嬉しそうに微笑んで、そうだよと頷いた。

(嘘、だって……ええっ?)

確かに小学校低学年の時、同じクラスに翔君という仲の良いクラスメートがいた。
確か同じ飼育係で仲が良くなった、ような。

でも思い出の中の翔君は、優しいけれど凄く大人しくて、背が当時の自分よりも低くて、レンズの厚い眼鏡をつけていたあまり目立たないような男の子で…今の目の前にいる羽水社長の幼少期だとは思えない。

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