きっとこれは眠れない恋の証明。
もちろんあの頃よりもずっと大人で綺麗にはなっていたが、基本的な顔立ちは記憶の中の小学生の頃の芝波さんとはあまり変わっていないように思った。
今日実際に会っても同じような事を思った。
芝波さんは当然俺と同じ歳であるから年齢は26か27。そのはずなのに、どこかまだ少女めいた可愛らしさ感じさせる彼女に、思わずドキっとした。
少しだけ頬の紅潮させながら恥ずかしそうに微笑んだ所を見て、あぁこの笑顔だと思った。
子供の頃の自分も、同じようにこの笑顔に見惚れていたのだと思うと少しおかしかった。
「羽水社長。今でも芝波社長の事がお好きなんですか?」
そんな早瀬の言葉に思わず黙る。
勿論、小学校の頃の初恋を27になった今まで引きずっていたなんてことはない。
中学校に上がった頃には彼女の事を忘れて新しい恋をしていたし、今まで沢山の女と付き合ったり別れたりを繰り返してきた。
小学校の頃は小さい身長や地味な身なりのせいでいじめられ、女の子と恋愛するなんて事とは無縁の生活を送っていたが、中学校に上がった頃くらいから俺は急激に背が伸びた。
度の強い眼鏡もコンタクトに変えたりなどしていると、自然と周りの人間の態度が変わってきた。