きっとこれは眠れない恋の証明。
別段そういった現象に嫌悪を覚える事もなく、
あぁ人間とはこういうものなのだと子供ながらに冷静に悟っていた。
周囲の態度が変わり、内向的で引っ込み思案だった自分の性格もそれにつられるようにして自然と変わっていった。
大学を卒業してからは落ち着いたが、
それまでは自分は女遊びが激しいタイプの人間であったと思う。お互い本気にならないような、後腐れのないような関係が気楽で心地よかった。
そして、自分に寄る女に対して、もし自分の外見が違ったらどうだっただろうと考えてしまうのは、もうやめられない癖のようなものとして自分の頭に定着するようになっていた。
自分の見た目が原因でよくいじめられていた過去があるから、そう卑屈になってしまうのは仕方がないし、別に何か困る事があるわけでもないから変に考えることをやめようともしなかった。
そしてそんな事を考えてしまう時、いつも初恋の女の子の顔が頭に浮かぶのだ。
あの子だけは、みそっかすな自分に優しく接してくれた。名前の通りの花のような笑顔を沢山見せてくれた。
あの頃の自分の恋心は一方的なものだったけれど…今だったらどうだろう。もう俺は人見知りで引っ込み思案の内気な子供じゃなくなったのだから、もしどこかで会えたら、振り向いて貰えたりする事だってあるのだろうか。