きっとこれは眠れない恋の証明。
そんな事を本当に時々だが考えていた──なんてそんな事を正直に答えたら、さすがの早瀬も引くだろう。
「俺が初恋をずっと引きずってるようなタイプに見える?」
「いえ、そういう訳では…。でも、今だったら"強力なライバル"という存在ももういないんじゃないですか?」
「あー…よく覚えてたね、それ」
「はい。
今日の対談は個人的にも面白かったので」
早瀬がそう答えたのが少し意外だった。
やっぱり女性は恋愛話とか、そういうのが好きな生き物なのだろうか。
"女性"か…。まぁ専属の女性秘書と言っても、自分にとって早瀬は、まるで保護すべき妹分のような存在で、女性というよりはまだまだ可愛らしい女の子だ。
──どうしてだろうなぁ、多分強力なライバルがいたとかそんな感じだったとは思うんですけど、どうだったかな。すみません、何しろ10年以上も前の事なので。
早瀬が覚えていたのは、どうして当時諦めたのかと聞かれた時に咄嗟にそう返した答えだ。随分昔の事なので覚えていないという風に誤魔化すようにぼかして答えたが、本当は全部覚えていた。