きっとこれは眠れない恋の証明。
そんな羽水社長の答えは意外だった。
秘書さんと一緒にいたから、てっきり仕事中かと思っていた。プライベートでも秘書とよく一緒にいるのは、私も同じだ。
「そうだったんですね。すき焼き、楽しんでください。今日は本当にありがとうございました」
そう言ってもう一度お礼を言うと、早瀬さんが私の目を見て口を開いた。
「あのっ…よかったら、芝波さんも一緒にすき焼き、食べにいきませんか?」
「えっ?」
そんな早瀬さんの提案に思わず驚いて小さく声を上げた。羽水社長も意外そうな顔をして早瀬さんの方を見たのがわかった。
すき焼きは私も大好きだ。早瀬さんや羽水社長ともっと話をしてみたい気持ちもある。
…でもその、いいんだろうか。
二人の邪魔になってしまったら申し訳ないと思いすぐに返事が出来ないでいると、羽水社長にも、迷惑じゃなかったら是非、と微笑まれ、私は言葉に甘える事にした。
二人が行く予定だった、羽水社長のおすすめだというすき焼き屋さんは、少し歩いてすぐの所にあった。
早瀬さんがすき焼きを食べた事がないという事は本当だったらしく、すき焼きを見て目をきらきらとさせていた。見るだけでもそのような様子だったが、実際にすき焼きを口に運ぶと、早瀬さんは目をきらきらとさせたまま、すき焼きってこんなに美味しいんですねと言って驚いたように目を丸くした。