きっとこれは眠れない恋の証明。

「二人とも本当に美味しそうに食べるな」

そう言って羽水社長が笑う。

(…あ)

何もかも昔とは変わったと思っていたけれど、どこか優しい笑い方と、少し目が細くなるような笑顔には昔の面影が残っているような気がした。

もう本当に随分前の事のはずなのに、意外と覚えているものなんだなぁと少しだけ不思議な気持ちになった時。

「あの、芝波さん。お聞きしたい事があるのですが」

そんな風にいきなり早瀬さんに切り出され、少し驚いた。一体私に聞きたいことなんて何だろうと構える。


「あっ…はい。何ですか?」


「芝波さんは、秘書の男の方とお付き合いはされていませんよね?」


「………。」


早瀬さんの突然の思いがけない質問に驚く。羽水社長も箸を持ったままポカンとして固まっている。

秘書の方…というと、京の事に間違いない。

──じゃあ聞くけど、芝波さんって黒瀬君と付き合っているわけじゃないんだよね?

前に砂川さんにも同じような事を聞かれたなぁとふと思いだす。砂川さんや早瀬さんだけではない。昔から色々な人に同じ類の質問をよくされてきた。
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