きっとこれは眠れない恋の証明。
羽水社長がそう言ったのを合図に、また早瀬さんに質問を重ねられた。
「じゃあ、好きな異性のタイプを教えて下さい」
「…お前は記者か」
羽水社長が呆れたようにため息をつきながらそう突っ込み、それがなんだか面白くてクスッとした。確かに早瀬さん、何かの雑誌の記者さんのようだ。
質問に答えなきゃと異性のタイプというものを少し考え込む。考えれば考えるほど、好きな異性というビジョンが自分の中でまとまらなくて、結局曖昧な答えを返してしまった。
「うーん、そういうのは特には…ないかもしれないです。早瀬さんは?」
初めてそう聞き返してみると、早瀬さんは不意をつかれたように少しだけ黙り込んだ。
「私は…働き者な男性が良いです。きちんと誰かの為に一生懸命に働けるような」
そんな早瀬さんの答えは、若い女の子が言う"理想のタイプ"としては珍しいんじゃないかと思った。
そして、心なしか思いつめたような目をしているのはどうしてなのだろう。
「へぇ、俺も初耳。そうだったんだ」
「わ、私の話はどうでもいいですから」
そう言って早瀬さんがすき焼きをパクパクと口いっぱいに頬張った。
そんな調子で三人ですき焼きを食べ終え、店を出た頃。
「すみません、私今からここの近くに用事があるので、お二人は先に帰っていて貰えますか」