きっとこれは眠れない恋の証明。

いきなり早瀬さんがそんな事を言い出した。

「用があるならそこまで送るよ」

そう言う羽水社長に、早瀬さんはそこまでしていただなくて良いですと断固として首を縦に振らなかった。何の用事なのか、具体的な事も教えてくれない。

「それでは、失礼します」

「あ、早瀬さん…っ」

改めて今日のお礼を言う間もなく早瀬さんはそそくさと去っていってしまった。
本当に急いでいるようだったし…でも、一体何の用があったんだろう。

「早瀬さん、何の用事があったんでしょうか」

隣に立つ羽水社長にそう尋ねると、羽水社長がはぁっと小さくため息をつくように息を吐いた。

「あー…、
早瀬なりに気を回した結果なんだろうな、あれ」

「……?」

羽水社長の言葉の意味が理解できずにポカンとする。気を回すって、羽水社長に?
…一体何の気を?

「ごめんね芝波さん、早瀬って突飛な女の子だから気にしないで」

「あ、はい」
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