きっとこれは眠れない恋の証明。

羽水社長の言葉にはいと言って頷いて返すと、何故かクスッと笑われてしまった。

「次に会う時は敬語禁止って言ったのに」

そう言われてハッとした。そういえば前対談で会った日に、そんな事を言われていたんだった。あの時は羽水社長に次に会うことなんてもう無いんじゃないかと思っていたけれど…。

実際にまた会ってみたけれど、羽水社長にタメ口で話すのはまだハードルが高い。
でも、私達は同じ歳で、小学校の頃はよく一緒に遊んでいた訳だし…。

敬語を使わないでと言われているのに、いつまでも頑なに敬語で話すのは、きっと良くない。

「が、頑張ります…じゃなくて、頑張る、ね」

変に敬語を外す事を意識すると、思わずカタコトになってしまう。

「いいね、その調子。あと羽水社長って呼ぶのも禁止にしようか。翔君で」

「ええっ!?」

そんな羽水社長の提案に面食らってしまう。
敬語をやめるのでさえ精一杯なのに、下の名前で呼ぶなんてそんな。

…絶対無理!

「そ、それは無理です!大体羽水社長だって、私の事芝波さんって呼んでるじゃないですか。フェアじゃないで…フェアじゃないよ」

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