きっとこれは眠れない恋の証明。
(わぁ…予想してはいたけど、羽水社長目立つなぁ)
スーパーに到着して早々、隣を歩く羽水社長に注がれる視線を感じながらそう心の中で呟いた。
このスーパーの客層は主婦がメインだ。若者や男性のお客さんは少ない店内に、ただでさえ人目をひくような容姿をした羽水社長は目立っていた。
それは、京と一緒にこのスーパーに来た時も同じだ。
「へぇ、ここ結構広いね。俺、店の中に入ったのは初めて」
「そうなんですね。ここ、結構何でも揃ってるからおすすめですよ」
そう言ってインスタントコーヒーを手に取り買い物カゴに入れる。
…ていうか私本当何やってるんだろう。
羽水社長にすき焼きご馳走になった後に、さらにスーパーまで連れて行ってもらって、そして買い物にまで付き合わせているなんて…。
よし、申し訳ないし、必要なものを急いで買ってすぐに帰らなきゃ。そう心の中で呟いた時だった。
「あらっ、お客さんこんにちは」
店員さんにそう声をかけられた。前に試食コーナーで試食して少し話して以来、よく気さくに声をかけてくれる、食品コーナーの担当らしい年配の女性の店員さんの安藤さんだ。名前は、胸にはめてあるネームプレートを見て一方的に覚えている。
「安藤さん、こんにちは」
「あれ、今日のお連れさんはいつものイケメンお兄ちゃんと違うのね…って、わぁ、あなたも負けないくらい良い男ねぇ」