きっとこれは眠れない恋の証明。

「昔も今も京は私に恋なんてしてないから、恋敵とかそういうのは…」

整理しきれない頭で絞り出したそんな言葉は、羽水社長にクスッと笑われてしまった。

「まぁいいや。そういう所ほんと変わんないね、芝波さん」

「え…?」

「いや、何でもないよ」

そう言って余裕のある笑みを浮かべる羽水社長を見て、やっぱり私はまたからかわれているんだろうかと内心で頭を抱えた。 

ただ、やっぱり羽水社長の笑顔には昔の面影を感じる。身長や性格や見た目が変わっても、一緒にいて落ち着くような優しい雰囲気は変わらない。
それに、ちょっとした話し方のクセも。

──今まで完全に別人だと思っていた翔君と羽水社長が、自分の中でほんの少しだけ重なったのがわかった。














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