きっとこれは眠れない恋の証明。

そんな言葉を聞いて、全身が氷になったように固まる。


「えー?バレなきゃ平気だよ。俺ほんと働くのが嫌いなんだよね」

(嘘……)

薄々感じていた嫌な予感は的中したのだと悟った。

───父親は、うつ病のふりをしていたのだ。





「………。」



受け止めきれないくらい大きすぎる事実に気がついて、急に身体中の力が抜けた。そして、その場に倒れるように座り込む。


「大丈夫大丈夫…って、ん?」


その物音に気がついたのだろう。電話中の父のそんな言葉にハッとした。

嫌だ。今はもう何も見たくない何もききたくない。言い訳もいらない。


「……っ」


頭はぐちゃぐちゃに混乱したまま、私は力ずくで立ち上がり、逃げ出すようにして家を走り出た。

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