キスの練習 -美容室-
気になってタオルをとる。
さっきまで薄く入っていた光が
ゆっくりと私の目に侵入してくる。
私と目があった彼は、
とても優しくて、とても艶っぽい表情をしている。
『お客様。お疲れ様でした。時間が来てしまったので本日のレッスンはここまでです。』
「え、あ、あの」
『延長をご希望ですか?』
「いや!いえ!帰ります!!」
『ふっ、本日はありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。』
彼は微笑んでいるけど、私はヘロヘロです。
「…ありがとうございました。」
『あっ、お客様。』
ドアノブに手をかけたとき、
腕をグイっと引っ張られた。
「ひぇ??」
『続きは家でね??仕事終わったら行くから、俺が帰るまで復習しといてね??』
「…」
『顔真っ赤!』
「っ!!もう!!」
そんなこと耳元でいわれたら、
誰だって赤くなりますよ!!
そのあと勢いよく部屋を出て、お会計。
と思ったのに、「代金は払われておりますので。」と
丁寧にお断りされた。絶対に彼だ。