キスの練習 -美容室-


彼は宣言通り、仕事帰りにうちに来た。


『ねぇ、怒ってるの??』

「あんなことするからでしょ??」

『それはお前が仕事場に来るからでしょ??』

「そうだけど、」

『そうだけど?何?理由があるの?』


また!ニヤニヤしてる。
絶対に私が来た理由知ってるくせに。


「もう知らない!!」

『ごめん。』


ふわっと私は包み込まれた。


『ごめん。困ってるお前可愛すぎて、ついいじめちゃうんだよね。仕事忙しくって最近全然会えてなっかったもんね。寂しい思いさせてごめんね?』


ほらね。理由なんてお見通し。


「私こそごめんね。寂しくてつい。お仕事の邪魔して怒ってる?」

『全然??今の俺のどこが怒ってるの?いきなりだからびっくりしちゃったけど、ほんとにうれしかった。だから、止まらなくてつい。』

「まぁ、キスが下手なのは教えるほうにも問題があると思うけどね??」

『なに!?それ根に持ってたの??』

って彼が笑いながら私を離すから、
私もつられて笑ってしまう。


『仲直りしよ??』

「うん。」


ちゅ

『ねぇ、顔真っ赤!』

「だって、さっきまでタオルで何も見えなかったから、顔が見えるの恥ずかしくて…」

『あ、そういうの好きだったの?』

「違う!!またいじわるする!!」

『男は好きな人をいじめちゃう生き物なの。』

「ガキじゃん!!」

『うちの子はどうしてこんなに口が悪いの??』

「誰のせいでしょうね。」

『あ、ケンカ売られた。さぁ、レッスンの続きしないとね?』

「待って!そういうことじゃ!っきゃ!!」


私を軽々とお姫様抱っこする。


「どこ行くの?!」

『わかってるくせに~』

「もう!!」

『あ、それと』

「ん?」

『次、職場にいきなり来たら特別レッスンまでするからな。まぁ、来てもいいけど。』

「いや、遠慮しておきます。特別レッスンは怖すぎます。」

『ちゃんと俺にも連絡してくれたらカットとかカラーとかしてあげる。』

「今度から、ちゃんと連絡します。」

『はい。いい子。いい子にはご褒美上げないとね?』


さっきまでと違う、
優しいのに噛みつくような深いキス。


このまま、わざと下手くそなままでいるのもいいかも


…なんちゃって。
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