二度目の結婚は、溺愛から始まる
祖父御用達の蕎麦屋は、『KOKONOE』の社屋から徒歩で行ける場所にあった。
もちろん駅の立ち食い蕎麦屋ではなく、薫り高い手打ち蕎麦が出て来る一流の蕎麦屋だ。
久しぶりに食べる本物の蕎麦は、美味しかった。
ついおかわりしてしまい、蕎麦湯も堪能し、大満足だ。
「本当に、美味しいお蕎麦だったわ。ありがとう、お祖父さま」
「次は、寿司にしようか」
日本を離れている間、取り立てて和食が恋しくなったりはしなかったが、いざ帰国すると食べたいものが次々思い浮かぶ。
「ぜひ!」
「明日にでも、行きつけの寿司屋を予約しよう。椿を連れ出してもかまわんかね? 雪柳くん」
「もちろんです」
「お祖父さま、どうして……」
なぜ祖父が蓮に許可を求めるのか、納得がいかない。
自分のことは自分で決められると言おうとしたが、続けて訊ねた祖父の言葉に目を見開いた。
「それで、二人の再婚生活はどうだね? 上手くいっているのかね?」
「……さ、再婚?」