二度目の結婚は、溺愛から始まる
自分ばかり、嫌なところやダメなところを見せている気がする。
(できることなら、せめて酔っ払ってストリップを披露したところまで、遡ってやり直したい……)
「いきなり再婚するのは勇気がいると思うし、まずは同棲から始めてもいいんじゃないかな? 同棲なら、もしダメになったとしても、離婚するよりゴタゴタしないと思うしね。それとも……もしかして、一時帰国しただけなのかな?」
瑠璃やジーノに、「戻らない」とは言っていない。
家族にも蓮にも、「戻らない」とは言っていない。
自分がどこに居たいのかも、わからない。
「それは……まだ、決めてません。ただ、友人の結婚式を手伝う約束をしているので、来月までは留まるつもりです」
「それなら、なおさら同棲してみるのがいいんじゃないかな?」
(すでに同居中で、しかもホテル並みに行き届いたサービス付きだなんて……言えない)
「そう……ですね」
わたしの歯切れ悪い返事に征二さんは首を傾げたが、追及はされなかった。
「ところで……結婚式を手伝う以外は何もせずに、休暇を楽しむつもり?」
「いえ。まだ、具体的には考えていないんですけれど、仕事はしたいと思っています」
ひと月くらいは、働かずとも大丈夫なくらいの蓄えはあるが、腕や勘が鈍らないように、カフェの仕事をしたかった。
涼と愛華に言えば、『TSUBAKI』で働かせてもらえるかもしれないが、ほかのスタッフがやりにくいだろう。
「それなら、うちでアルバイトをしない? 夜のシフトに入れるなら、カクテルの作り方も教えてあげるよ」
「いいんですかっ!?」
願ってもいない征二さんの申し出に、身を乗り出す。
「うん。しばらくの間、ちょくちょく店を空けることになるから、信頼して任せられる人を探していたんだ。椿ちゃんなら勝手がわかっているし、経験もあるから安心だ」
「わたしでよければ、ぜひお願いします! でも、お店を空けるって、別店舗でも展開するんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね……」
言い淀む征二さんの表情が、曇る。
何かよくないことが起きているのだろうか。
ここに、奥さんの姿がないことが気になった。
踏み込むべきか、黙っているべきか。
判断に迷っていると、征二さんがふっと息を吐いて理由を告げた。
「実は、俺の奥さんがちょっと厄介な病気に罹ってね。隣の県の病院に入院することになったんだ。本人は、すぐに退院するんだから見舞いに来なくていいなんて言ってるけれど、そういうわけにもいかないし。最低でも週に二、三回は顔を出したいんだよね」
「……大変ですね」
週に二、三回顔を出すつもりだということは、言葉どおりに「厄介な病気」で長期の入院になるのだろう。
何と励ましていいかわからず、月並みな言葉を口にするしかない自分が情けない。