二度目の結婚は、溺愛から始まる
「わたしと紅さんが、似てる……? どこが?」
わたしと彼女の間に、共通点があるとは思えなかった。
彼女は、バリバリ働くスーツの似合う「デキる女」。
その上、蒼と結婚し、母親になり、家庭を築き、堅実な人生を送っている。
対するわたしは、いわゆるビジネススーツなんて一度も着たことがないし、現在無職。離婚して子どももなく、恋人も再婚の予定もない。
その上、離婚した元夫とあいまいな関係のまま、同居中だ。
お世辞にも、「きちんとした大人」とは言い難い。
そう思ったが、コテッと首を横に倒した蒼は具体的なポイントを挙げた。
「ええと……似てるところは、いろいろあるけど……見た目はしっかりしてそうなのに、ちょっと抜けてるところ?」
「…………」
緑川くんのときとちがい、蒼の仕草にイラッとした。
無意識にぐっと拳を握りしめた途端、身の危険を察知した蒼が、焦った様子で叫ぶ。
「そ、そこが、かわいいんだよっ!」
「……それだけ?」
「あと……キスでクタクタになるとこ?」
(クタクタ? た、確かに、蓮のキスは好きだし、キスされるとわけわからなくなりがちだけど、でも……)
「いつ見たのよっ!?」
「見てないけど、なんとなくそうかなって思って。先輩ってば、男女関係なく友だちになれる人だけど、あの頃あきらかに処女っぽかったし。あの人、絶対紳士の皮被った狼だし。そういうの、得意そうだし」
(蓮が、紳士の皮を被っているのは否定しないけど……処女って、外から見てわかるものなの? じゃあ、そうじゃないのもわかるってこと? それって……とんでもなく恥ずかしいんじゃないのっ!?)
「あ! あと、照れ屋なところ。いまみたいに、ちょっと際どいこと言ったりしたりすると、すぐ赤くなるんだよねー。楽しくって、わざと照れるようなこと言いたくなっちゃうんだ」
蒼は、ニコニコ笑いながら「紅は、照れるとすっごくかわいい」などと、いらぬ情報を付け足した。
「……本人は、ちっとも楽しくないと思うけど」
蓮にさんざんからかわれている身としては、とても他人事とは思えない。
「あとは…………一番似てるのは、まっすぐなところかな」
「……まっすぐ?」