二度目の結婚は、溺愛から始まる
「白崎も……元気そうだな?」
「雪柳ぶちょーも、元気そうですね」
棒読みの挨拶をする蒼に苦笑し、ちょうど紫ちゃんを抱いて出て来た紅さんを振り返る。
「相変わらず、黒田にベッタリみたいだな。それにしても……椿と白崎が知り合いだとは、知らなかったよ」
「蒼と椿は、同じ大学の先輩後輩なだけでなく、チョコレートが好き同士で、仲が良かったんです」
「なるほど」
愛華の説明に軽く頷いた蓮は、この場で唯一顔を知らないと思われるナンパ男に握手を求めて手を差し出した。
「雪柳だ」
「どうも。ナギです」
「会ったことはなかったと思うが……椿とは、どういった知り合いで?」
「知り合いじゃないですよ。出会ったばかりの、運命の相手です」
「ち、ちょっと、何を……」
ナンパ男のとんでもない答えに、わたしが慌てて抗議するより先に、蓮がすかさず問い質す。
「運命の相手? どういう意味だ?」
「椿にあんたは似合わないってことだよ」
蓮は途端に表情を強張らせ、ナンパ男に冷ややかなまなざしを向けた。
「他人にとやかく言われる筋合いはない」
「別れた元夫は、他人だろ?」
「ただの他人ではない」
「過去の男だ」
睨み合う二人の様子を蒼は面白そうに、緑川くんは心配そうに、愛華は楽しそうに眺めている。
(どうしてこんなことに……)
まさか、蓮ではなく自分が修羅場を覚悟しなくてはならないなんて、思ってもみなかった。
「二人とも、やめて。こんなところでする話じゃないでしょう?」
「おまえは黙ってろ」
「椿には、関係ない」
「は? 関係ないって、そんなわけないじゃないっ!」
「これは、男同士の話だ」
「口を挟むんじゃない」
「口を挟むなって……本人を差し置いて、勝手なこと言わないでっ!」
三竦み状態で睨み合うわたしたち。
その場に漂う険悪な雰囲気を破ったのは、愛くるしい叫び声だった。
「……だぁあっ」