二度目の結婚は、溺愛から始まる

顔を背けた蓮の声は、ひび割れていた。

わたしは家族や瑠璃、ジーノに支えられて、何とか辛い日々を乗り切ってきた。

でも、蓮はひとりきりで辛く悲しい日々をやり過ごさなくてはならなかった。
蓮の傍には誰もいなかった。

誰よりも傍にいるべきだったわたしが、逃げ出したから。


「蓮……ひとりにして、ごめんなさい。わたしとわたしの家族のせいで、蓮をひとりぼっちにしてしまって、ごめんなさい。蓮だって辛かったのに……誰かに支えてほしかったはずなのに……」


冷え切ってしまった蓮を温めたくて、腕を回し、抱きしめる。
胸が張り裂けそうに痛み、涙が溢れた。


「わたしが蓮の傍にいなくてはいけなかったのに。わたし、自分のことしか考えられなくて……」

「椿の傍にいるべき時に、いられなかったのは、俺だ」

「逃げ出したのは、わたしよっ! 自分がしたことに耐えられなくて……」

「でも、戻って来た」


自分から戻って来たのではない。
祖父や母、柾が背中を押してくれなければ、きっといまも逃げ出したままだった。


「わたしっ……」

「戻って来てくれたんだろ? 俺のために」

「わたしはっ……」

「……嘘でもいいから、そうだと言ってくれ」


再会した当初は、ちがった。


でも、いまは蓮の傍にいたいと思っている。



その気持ちに嘘はなかった。


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