二度目の結婚は、溺愛から始まる
ランチメニューは、定番の生ハムかサーモンを添えた二種類のパンケーキ、日替わりパスタ、サンドイッチに、数種類の中から選べる好みのドリンクが付く。
二か月に一度、期間限定メニューを用意して、常連さんが飽きないように工夫していたが、今回はわたしと海音さんが考えたものをその代わりにしたいと征二さんに言われていた。
お店が空いている間に、海音さんが家で焼いた自家製フランスパンやスコーンを試食し、スコーンは午後のお茶の時間に楽しんでもらうのがいいだろうと三人の意見が一致。フランスパンは、テイクアウトも可能なサンドイッチにしてはどうかと海音さんが提案した。
「コーヒーのテイクアウトもしてるなら、ランチのテイクアウトもどうかな、と思って。お昼にゆっくりできないお客さまもいるし」
現在、『CAFE SAGE』では紙コップを使ったテイクアウト用のコーヒーは用意していないが、タンブラーやボトルを持参してくれるお客さまには、対応している。
テイクアウト用のフードもプラスすれば、席が埋まっていたらコーヒーとランチを買って帰るという選択肢が生まれる。
「それに……有名コーヒーショップ以外の喫茶店だと、ひとりでは入りづらいという人もいると思うの」
「そうだね……できる限り最初のハードルを低くしないと、新規のお客さまは望めないね」
現在ランチメニューにあるサンドイッチは、オーソドックスな食パンのサンドイッチ。テイクアウトするには容器に入れたりしなくてはならないし、少々面倒だ。
しかし、フランスパンのサンドイッチなら型崩れしにくく、包装は簡単でいい。
「ただ……毎朝焼くのは海音ちゃんの負担になるよね? どこかから仕入れたほうがいいね」
「あ! それなら、アテがあるので大丈夫です。わたしが焼くのとまったく同じレシピのものが手に入ります」
「海音さんと同じレシピ……?」
わたしにはどういうことかさっぱりわからなかったが、征二さんはすぐにピンと来たようだ。
「もしかして、音無さんのお店に頼むつもり?」
「はい。『SAKURA』のパンだけでも食べられるとなれば、ちょっとした話題になるんじゃないかと思うんです」
「あの、『SAKURA』って、フレンチの?」
訪れたことはないが、『SAKURA』は予約が取れないことで有名な超がつく高級フランス料理店だ。
シェフは、本場フランスの星が付くレストランで修行した日本人。
料理関係の雑誌でよく取り上げられている、なかなかのイケメンだ。
「そうよ」
「音無さんは、海音ちゃんのお父さんなんだよ」
「ええっ!?」