二度目の結婚は、溺愛から始まる
「え?」
「キスマークは見えないところにつけるし、翌日仕事がある場合には加減する。本当に椿が疲れている時には、無理強いはしない。だが……キスはする」
「でもっ」
「キスが好きなんだろう?」
「好き、だけど……」
「だったら、問題ないだろ」
「問題は……」
わたしの首筋に顔を埋めた蓮の手が、いつの間にかブラウスの中へ潜り込んでいる。
「……蓮……何してるの?」
「まだ、何もしていない。これからするところだ」
「わたし、疲れているんだけど?」
「わかってる」
「さっき、疲れているときは無理強いしないって言っ……れ、んっ!」
「明日から、言うことを聞くから……今夜は、抱かせろ」
「…………」
あまりにもストレートな物言いに唖然とするわたしを見つめ、蓮はこの上なく甘い笑みを浮かべる。
「あんな告白を聞いて、何もせずにはいられない」
「え……あっ……あれはっ」
ナンパ男に向かって言い放った言葉を思い出し、赤面する。
「今度は、言う相手をまちがえないでくれ」
「今度なんか……ないわ」
「素直じゃないな」
「蓮だって……」
「俺は、椿を愛している。他の男には渡したくない。だから……」
真剣なまなざしに、からかいの色はない。
むしろ、不安の翳りが見える。
顔も頭もよくて、地位もあって、優しくて……ハイスペックな蓮はもっと自信を持ってもいいくらいなのに、意外と自分のことをわかっていない。
こんな人と一度でも結婚したら、他の男性なんか目に入らなくなって当然なのに。
「……キスしてもいいか?」
強引だけれど、傲慢ではない。
最後には、わたしの意思を優先しようとする優しさが、どうしようもなく愛おしい。
(やっぱり……キスしないなんて、無理)
触れそうで触れない距離でわたしを覗き込む蓮に、自分から唇を重ねた。
「さっきのは……なかったことにして」
「キスマークは見えるところにつけてもいいし、翌日仕事がある場合でも加減しなくていいってことか?」
「そっちじゃなくてっ!」
「何のことだ?」
惚けて見せる蓮は、わたしの口から言わせたいのだろう。
「……キスして」
「夜はダメなんじゃないのか?」
(この人は……っ!)
思う通りに操られるのは悔しいけれど、言わずにはいられなかった。
「夜でも朝でも、いつでもいいから…………キスして」