二度目の結婚は、溺愛から始まる
(深夜十二時を過ぎても、爽やかさを失っていないなんて、どういう仕組みなの……)
こんな時間にも関わらず、蓮にだらしないところはまったく見当たらなかった。
わずかにネクタイを緩めているくらいで、酔っ払って顔が赤いわけでも、Yシャツの裾がはみ出しているわけでもない。朝出かけた時とほとんど変わらない姿だ。
「おかえり、なさい?」
蓮は「ただいま」と言いながら手を伸ばし、わたしを引き寄せ、抱きしめた。
(……しかも、わたしとちがって、いい匂いまでするし)
「遅かったのね? 接待は、柾も一緒だったの?」
「ああ……」
酔っていないように見えて、実は酔っているのか、蓮はわたしを離そうとしない。「ただいま」の抱擁にしては、長すぎる。
「ねえ……蓮? どうかしたの?」
「どうもしない」
「どうもしなっ……てっ!」
拘束を緩めた蓮は、わたしを解放すると思いきや、いきなりキスをしてきた。
「んっ! れ……んんっ」
新婚さんによくある「ただいま」「チュッ」なんていうかわいいキスではない。
捕食者が獲物を貪るようなキスだ。
しかも、器用な蓮はキスしながらわたしのシャツを脱がせ、ベルトを抜いてパンツを引き下ろし、あっという間にあられもない恰好にしてしまう。
まさかこのまま玄関でする気かと慌てふためいたが、そこまで理性を失ってはいなかったようで、シャツ、ベルト、パンツ、下着……わたしの服を転々と置き去りにして、寝室へ直行した。
ベッドの上にわたしを横たえ、馬乗りになると、今度は自分の服を脱ぐ。
もちろん、その間もキスは続行される。
「ねえ、れ……んっ……ちょっ……まっ……」
蓮の行為は、どれも乱暴ではないけれど、容赦なかった。
まともな会話もできないまま、何度も悲鳴を上げさせられては、キスでそれを呑み込まれる。
再会して、七年ぶりに蓮とベッドを共にしたあの夜の比ではない。
身体が粉々になりそうな快感のあと、まどろむことも許されず、同じことを繰り返される。
何度も、何度も。
蓮の指がほんのわずか肌をなぞっただけでも震えが止まらず、このままでは「おかしくなる」と本気で思ったほどだ。
結局、蓮がわたしを解放したのは空が白み始める頃。
叫びすぎて声は枯れ、汗や涙で化粧が落ちたぐちゃぐちゃな顔のまま、力尽きるようにして眠りに落ち……目が覚めた時にはとっくに昼の十二時を回っていた。
つまり……
完全に、遅刻した。