二度目の結婚は、溺愛から始まる
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「椿……起きろ」
「んー」
ゆらゆらと浮上していく意識は、温かくて、気持ちいいものに包まれていると教えていた。
手足を思い切り絡めた物体は、低反発枕並みにわたしの身体にぴったり寄り添っている。
「起きられないなら、ちょっと離れろ」
「イヤッ!」
無理やり抱き着いているものから引きはがされそうになり、抵抗した。
「朝から襲われたいのか?」
不穏な言葉にギクリとして目を開ければ、そこにいたのは仏頂面の蓮だった。
「れ、ん……?」
「おまえは休みかもしれないが、俺は仕事なんだよ」
「え? え?」
何がどうなって、いま自分がどこにいるのか、一瞬わからなくなった。
「大事な商談さえなければ、仮病を使いたいところだが……」
戸惑うわたしを組み敷いて、蓮は首筋からデコルテへ唇を滑らせ、落ち着きなく脈打つ心臓の上で止まる。
微かな痛みが走り、ピクリと身体が震えた。
「もう少し寝てていいぞ」
蓮は、満足そうにわたしを見下ろし、ひと言告げるとベッドを離れた。
(そんなこと言われても……眠れるはずがないじゃない!)
昨夜のことを思い出すだけで、身体が熱くなってくる。
(裸を見られただけでも、相当なのに……あんなの……)
これまで友人たちから聞いていた知識なんて、何の役にも立たなかった。
確かに痛みはあったけれど、記憶の大半はこれまで経験したことのない気持ちよさと恥ずかしさで埋め尽くされている。
(あれが、普通なの? それとも……わたしが、おかしいの?)
自分のものとは思えない声を上げ続けていた気がするし、ところどころ蓮に「もっと」なんて、せがんだ気もする。
(……どんな顔をすればいいの?)
平然と顔を合わせるなんて無理。
恥ずかしすぎて、泣きそうだ。
(そうよ、蓮が出て行ってから起きればいいのよ!)
そう思っていたのに、しびれを切らした蓮がわたしを起こしに来た。
「椿、起きろ。起きないなら、無理やり布団を引きはがすぞ。それとも……具合が悪いなら、病院へ連れて行くが?」
(び、病院っ!?)
「お、起きるっ! 起きるからっ……出てってよ」
「いまさら何を恥ずかしがる必要があるんだ? 全部見たぞ?」
「それでもよっ!」