二度目の結婚は、溺愛から始まる
素直になれないプロポーズ
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「椿っ! 大丈……っ!」
電話で話してから、十五分後。
駆けつけた蓮は、鍵の掛かっていない梛の部屋に入って来るなり、ソファーにいるわたしたちを目にして固まった。
「おまえっ!」
怒りの形相で、梛を引き剥がそうとする蓮を慌てて止める。
「シーッ! 起こさないでっ!」
「椿、何を言って……」
「寝てるだけだから」
「寝てるだけ? 抱きしめてるだろうがっ!」
「ロクに寝ていないんだと思うの」
「だからどうした。窓から放り投げてやる」
真顔で言う蓮は、本気だ。
「酔ってたんだと思うし、と、とりあえず退かして、ベッドまで運んでほしいんだけど」
「床で十分だろ」
「でも、その、ちょっと片付けたいし」
「…………」
苛立ち交じりに溜息を吐いた蓮は、梛を軽々と担ぎ上げ、ベッドへ放り投げた。
乱暴な扱いでも、梛は起きる気配もなく、熟睡している。
(あれで起きないなら、遠慮なく突き落とせばよかった……)
「忙しいのに、呼びつけてごめんなさい。ありがとう、蓮」
ようやく自由を取り戻してソファーから立ち上がり、さっそく窓を開け放つ。
蓮は、そんなわたしを見下ろし、お説教を始めた。
「椿。ひとり暮らしの男の部屋に上がり込むなんて、無防備すぎる。襲ってくれと言っているようなものだろうがっ!」
「で、でも、緊急事態だったから……」
「椿にそのつもりがまったくなくても、相手も同じとは限らない。男の中には、欲求を解消するためだけに、女を抱くヤツもいるんだっ!」
「ご、ごめんなさい……」
「何もされていないだろうなっ!?」
「う、うん……」
梛がわたしに仕掛けたことが、「何かされた」うちに入るのか微妙なところだ。
(でも、キス……ではないし、言ってみれば……犬に舐められたようなものだし……)
無意識に首筋を撫でていたらしい。
そんなわたしの仕草を見た蓮が、すっと目を細めた。
「椿……?」
「な、なにっ!?」
やましいことなど何もないのに、ギクリとしてしまう。
「……あのヤロウ……タダじゃおかない」
「え?」