二度目の結婚は、溺愛から始まる
「おまえの練習に付き合っていたなら、できるだろ?」
「それは……」
「性格は最悪でも、見てくれだけはいいからな。ゲストにも喜ばれる」
確かに、わたしの練習に付き合ってくれていた蓮は、数々の技をマスターしていた。むしろ、わたしよりも完璧なくらいに。
(確かに、わたしと梛がやるよりも、蓮と梛のイケメン二人がやればより盛り上がるかも……)
すっかり弱気になって俯いた視界に、白いリボンがかけられた焦茶色の細長い小箱が差し出された。
(ん?)
箱の表面には、金色の文字でわたしお気に入りのショコラティエの名前が書かれている。
驚いて顔を上げれば、優しい表情をした蓮がこちらを見下ろしていた。
「差し入れだ。好きなものを食べれば、少しは緊張も和らぐだろう?」
梛とは大ちがいの優しい言葉に、涙が込み上げる。
「蓮……」
抱きつきたくなるのをぐっと堪えて小箱を受け取り、ぎこちない笑みを浮かべて見せた。
「……ありがとう」
「それから……もう一つ差し入れがある」
「もう一つ?」
どんな美味しいものをくれるのかと期待のまなざしを向けると、蓮がすっと長身を屈めた。
(いまの……)