二度目の結婚は、溺愛から始まる
「予定はしていますけど、蓮が休みを取れるかどうかわからなくて」
「そっか。雪柳さんの部署は、特別忙しい時期だからね……。シフトはいつでも調整できるから、遠慮なく言ってね?」
「ありがとうございます」
蓮には、無事仮免に受かった段階で、六月末の日・月曜日を利用して一泊二日の小旅行へ行きたいと要望を伝えてあった。
できる限り調整してみると言ってくれたが、未だ確約はもらえずにいる。
監査、株主総会、四半期決算。
連日の残業に休日出勤が続いている蓮とまともに顔を合わせるのは、朝の出勤時だけ。
そんな状態ということもあり、予約していたプロポーズは延期してほしいとわたしからお願いした。
わたしがプロポーズの返事をするとき、蓮には心の底から笑っていてほしかった。
その時だけは、何の憂いもなく、幸せだけを感じてほしかった。
(株主総会が無事終われば、蓮の仕事も一段落すると思ったのに……。なかなか、思うようにはいかないわね)
蓮がどうしても休みを取れなければ、一から計画を考え直すことになる。
(あまり先延ばしにすれば、蓮を不安にさせてしまう気がするし……)
溜息を吐きたくなる気持ちを抑え、鞄の中に入れっぱなしにしていたスマホを取り出す。
蓮からメッセージが届いていたが、半ば諦めモードでタップして……「休み、確保できた」の文字に椅子から飛び上がった。
「せ、征二さんっ! ちょっと待ってくださいっ!」
スタッフルームを出て行こうとしていた征二さんを慌てて引き止める。
「ん? どうしたの?」
「あのっ! 急で申し訳ないんですけれど……今度の日曜日と月曜日、お休みさせてもらえませんか?」
「雪柳さん、休み取れたの?」
「たったいま連絡がありました!」
「よかったね! もちろん、休んでもらってかまわないよ。どこへ行くかもう決めてるの?」
「はい。F県です」