二度目の結婚は、溺愛から始まる
「俺たちと同年代のはずだ。『KOKONOE』の社員食堂で、ものすごく美味しいチョコレートを貰ったのが縁らしい」
「チョコレートに釣られたの? まったく……蒼らしいわね」
「でね、蒼の結婚式のことなんだけど……緑川くんが、蒼が手当たり次第に声をかけた大学時代の仲間とか、仕事仲間とかをまとめてくれているの。椿、しばらくこっちにいるのよね?」
「とりあえず、蒼の結婚式まではいるつもりよ」
祖父の体調は心配いらないようだし、会場デザインを引き受けるかどうかは別として、蒼の結婚式には何かしてあげたいと思っている。
「それなら、緑川くんにアドレスかID教えてあげて? 蒼との打ち合わせも必要だろうし」
「緑川くんは、相変わらず蒼のお世話係なのね?」
「幼稚園から一緒って言ってたし、血は繋がっていなくても兄弟みたいなものなんでしょ。それにしても……蒼が結婚式のヘルプを頼んだ人たち、各業界の有名人ばっかりなのよ」
愛華がタブレットを取り出し、ポップなデザインのパワポを見せる。
そこには、各分野で活躍する若手のデザイナーやらプランナーの名がずらりと並んでいた。
「招待状にプレミアが付きそうな顔ぶれね……」
「蒼は、自分の結婚式が出会いの場になればいいと考えているんだろ。ビジネスでもプライベートでも、フリーで仕事をする人間にとって『出会い』は貴重だからな」
「涼の言うとおりだと思うけど……」
(だとすれば、どうしてわたしに会場デザインを依頼してきたの?)
解けない疑問に首を捻る。
蒼は、わたしがデザイナーではなくバリスタの道を選んだことを知っているのだ。
「なあ、椿。おまえ、もう……日本には戻らないつもりなのか?」
「え……」
その話をするつもりではあったけれど、いきなり訊ねられて、言葉に詰まる。
「涼っ! ごめんね? 椿。ほんっとデリカシーのないやつで……」
愛華が慌ててたしなめたが、涼はうやむやにするつもりはないとはっきり言った。
「愛華。これから椿がどうするかは、椿だけの問題じゃない。俺たちの問題でもあるんだ。デリカシーだの建て前だの、俺らの間にきれいごとはいらないだろ?」