二度目の結婚は、溺愛から始まる
思わず強い口調で百合香の言葉を遮ってしまい、慌てて言いつくろう。
「わたしと会ったことは、彼に言わないでおいてくれませんか? とても繊細な問題だから。どうぞ行って。待っているんでしょう? 支払いはわたしがしておきます」
「あの、でも……」
財布を取り出そうとする百合香を制し、伝票を取り上げる。
「いいから、行って!」
――蓮と顔を合わせたくない。
そんなことを思うのは、初めてだった。
「それでは、お言葉に甘えさせていただきます。……失礼します」
「身体を大事にしてください」
「……ありがとうございます」
窓の外を見れば、先ほど見た蓮の車があった。
百合香が店から出て来るなり、蓮が運転席から降り立ち、助手席のドアを開ける。
手を添え、優しく彼女を導く様子は――、
まるで仲睦まじい夫婦のようだった。