二度目の結婚は、溺愛から始まる

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蓮が出て行った後、洗濯と部屋の掃除で動揺を鎮めたわたしは、昼食にパスタでも作ろうと思い立った。

馴染みのあるものを食べれば、さらなる精神の安定が図れるかもしれない。

戸棚を漁り、トマト缶と乾燥パスタ、オリーブオイルを発見した。
ガーリックパウダーでなんとかごまかすしかないと思いつつも、「もしかして」と淡い期待を抱いて冷凍庫を探り、ニンニクを見つけて小躍りする。


(あれ……?)


お湯が沸くのを待つ間、ダイニングテーブルの上に置きっぱなしにしていたスマホを手にして着信があったことに気がついた。

緑川くんからのお知らせで、今日の午後に蒼と緑川くん、涼と愛華で結婚式の打ち合わせをするから、可能なら参加してほしいとのことだった。

十五時の待ち合わせなら、これから準備しても十分間に合う。

さっそく『了解』の返事を送り、即席ポモドーロで昼食を済ませると、幾分念入りに身支度を整えた。

待ち合わせ場所は、『TSUBAKI』の本店。

涼と愛華もいるし、ただの客として訪れるのではなく、共同経営者としてスタッフに挨拶しなければならないだろう。

ジャケットにパンツというシンプルなスタイルだが、きちんとメイクもし、髪も編み込むようにしてまとめた。

唯一の飾りは、蓮が即決して買った椿をモチーフにしたダイヤモンドのネックレスだけだ。

久しぶりに乗る電車にまごつきながらも、何とか約束の時間までに『TSUBAKI』に辿り着いた。

年相応の落ち着いた大人に見えることを祈りつつ、『TSUBAKI』の扉を開ける。


「いらっしゃいませ」


笑顔で出迎えてくれたスタッフに、涼と愛華の名を告げるとバックオフィスへ案内された。


「へえ? 今日はまともな恰好だな? 椿」

「昨日はずいぶんやる気のない恰好で、超がつくほどのイケメンとデートしてたんだって?」


パソコンに向かっていた涼と愛華は、わたしを見るなりにやにや笑い出す。

昨日のことが、二人の耳に入っているかもしれないとは思っていたが、あからさまにからかわれると居心地が悪い。


「蒼と緑川くんを待たせてるんじゃないの?」


愛華はにやにや笑いを浮かべたまま「手の空いているスタッフを呼んで来る」と言って出て行った。

すぐに、店長をはじめとした幾人かのスタッフが愛華と共に部屋へやって来たが、中には昨日蓮と一緒にいたわたしを目撃していたスタッフもいて、ぽかんとした表情をしている。

鏡を見て、我ながら昨日とは別人のようだと思ったので、彼女が驚くのも無理はない。


「オリジナルを三つ、個室へ持って来て」

「ブラックでね」


涼と愛華は、わたしが形ばかりの挨拶を終えると、蒼と緑川くんが待っている個室に三人分のコーヒーを持って来るよう言い置いて、オフィスを出た。

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