二度目の結婚は、溺愛から始まる
あまりにもきっぱり言い切られて、そうなのかと思いかけ、「ちがう!」と叫んだ。
「同棲って、恋人同士がするものでしょうっ!?」
「ああ。だから、同棲だろう」
「だからっ」
「先に食べてもいいか? 昼をまともに食べられなかったんだ」
「いいけど……」
断じて同意はできないが、空腹の蓮にお預けを食らわせるのもどうかと思い、渋々引き下がる。
蓮が着替えている間に、サワラを揚げ直し、お吸い物を温めた。
「春らしくて、美味そうだな」
「久しぶりに日本の食材を見たら、あれこれ食べたくなって、つい買い過ぎちゃったの」
「いただきます」
向かい合って坐り、蓮が料理を口に運ぶ様子を窺う。
「味、薄くない?」
「ちょうどいい。それで……一ノ瀬たちとは、話せたのか?」
どうして『TSUBAKI』に行ったことを知っているのかと驚くわたしに、蓮は苦笑いした。
「椿に会うと連絡をくれた。コンサルタント料は貰っていないが、カフェの経営について相談に乗っていたから、報告の義務があると思っているんだろ」
開店前から、蓮にはいろいろとアドバイスをもらっていたから、二人が頼りにするのも理解できる。
だが、子ども扱いされるのは納得がいかない。
「だからって……わたしと同居しているなんて、わざわざ言わなくてもいいじゃない。わたしはもう大人よ。保護者は必要ないの」
「柾から預かった責任を果たしているだけだ。それで、話はできたのか?」
蓮は、一度こうと決めたら、誰に何を言われようとやめない。
言い合いが平行線を辿るのは目に見えていたので、諦めた。
「……共同経営者を辞めたいと伝えたわ」
「本当にそれでいいのか? 後悔は……」
「しない。六年も放って置いたし、事実上何もしていなかったのよ? いまの『TSUBAKI』を作ったのは涼と愛華だもの。二人に任せるのが一番よ。本当は……ずっと前から、そうするべきだと思っていた。それを昨日、再確認したわ」