パステルピンクの中で
うぐいすの鳴き声が聞こえてくる。
わたしは、白いパジャマから薄い紫色のワンピースに着替えた。
低いヒールがついた茶色い靴を履いて、わたしは近くの公園へ行った。
何人かの子供たちが遊んでいて、お年寄りの人はベンチにのんびりと座って桜を眺めている。
わたしは木の近くまで行って、パステルピンクの花を見上げた。
「キレイ……」
薄い灰色の背景や黒に近い茶色の木には、あまり似合わないピンク色。
グレーやブラウンといった、地味な色をパステルピンクが彩っている。
「花房(はなぶさ)。あんた、1人で来たの?」
声がしたのでわたしは振り返ってみると、水色のシャツにジーンズを履いた彼が立っているのが分かった。
「五十嵐(いがらし)、くん……」
全然気づかなかった。五十嵐 雨月(いがらし うづき)くんは、中学時代の3年間同じクラスだった人。
「うん、1人」
「ふーん、じゃあ一緒だな」
そう言って、彼は木に咲いている桜の花を見上げた。
わたしも同じように、ブラウンを彩るピンクの桜を見上げるけれど、何も話さない、というのが少し気まずかった。