パステルピンクの中で
木の枝に乗りながら見る景色は、遠くも近くも桜が満開だった。
「やっぱりキレイ……」
やっぱり、どこもパステルピンクだ。
春は、こんな風にパステルピンクで彩っていて目を楽しませてくれるので好きだ。
いつまでも木に乗っている訳にいかないので、一通り桜を見回したところで、わたしは降り始めた。
「あれ? これ、どうしよう?」
枝が多くて、どこに足を引っかければいいのか途中で分からなくなった。久しぶりに木に登ってみたものだから、降り方が分からなくなったのかな。
見ている彼は、わたしが降りれそうにないことを見てとったのか、呆れたようにため息を吐いた。
……まあ、呆れるよね。
「ほら」
彼は、わたしの方に両手を伸ばしてきた。
……あっ、これってもしかして、降ろしてくれるってこと?
「はやく、こっちに手伸ばせ」
わたしは五十嵐くんの方に手を伸ばすと、彼はそれを掴んで降ろしてくれた。
「ありがとう」
わたしは、彼から手を離した。
「ったく。こうなるんだったら、最初から登んなよ」
わたしの方をいぶかしげに見ながら、五十嵐くんが言った。
「ごめーん。でも、登るって楽しいよ?」
全く反省できていないわたしを見て、彼は肩をすくめた。