twilight sinfonia
瑠南はこれまた無抵抗に俺の腕からするりと降りて、俺はそのまま洗面所を出た。
「うわ……ブス」と、鏡を見たであろう瑠南の声を背中に、俺は即刻、下の階、作業部屋にこもった。


「……あ」


先約がいたけども。


「あ、瀬那も作業?」
「まぁ。お前は?作曲なくない?」
「まぁね。ただ、保険って大事だよねっていう。
俺以外みんな忙しくて、瀬那なんか4曲持ってるじゃん?今回は快斗も2曲持ってるし。
深優と保険かけとくのはアリかもねって話して」


あーね、と琉星の斜め前の席に座る。
起きてすぐに立ち上げてあったから起動は速い。


「瀬那今何曲目?」
「3曲目」
「あー……流石のペースだね。大丈夫そう、か」


ぷつぷつと呟きながら、ヘッドホンもつけてないのに無音でカチカチと音を当てていく琉星。
脳内再生の正確性は瑠南より上。
だから音も聞かないで音当てて、出来上がってから聞くガチの感覚派。
俺は相対音感が若干強いくらいで、絶対音感はほぼないようなものだから聴きながらやらなきゃ進まない。
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