twilight sinfonia
タイミングで良いのか悪いのか、ちょうど机の上に投げ出した俺のスマホがなった。
どうやらなすちゃんがついたらしかった。


「……帰ろ」
「うん」


俺は深優の手を引いて、楽屋を出てエレベーターに乗り込む。


「あんまさ、恋人ごっことかしないでね、あいつと」
「そんなことしてないよ。蒔唯くんが仲良くしてくれてるだけだもん」
「……いいじゃん、まだ。今は俺だけじゃダメ?」
「誰もそんなこと言ってないよ」


深優はニコニコして、俺を見つめている。


付き合ってないのに、こんなことをする関係なんて絶対良くないのはわかってる。
でもさ、フラれるのがオチなんだよ。
「私には婚約者がいるから無理」って、言われるに決まってる。好き嫌いすらも、言ってもらえない状態で。


て言うか明らかに深優は俺のことが好きなはずなんだよ。
そうじゃなきゃ、キスされても、襲われても、俺の家に来るなんておかしい話じゃん。


じっと、深優を見つめ返す。
エレベーターの扉が開く寸前、俺はまた深優にキスを落とした。
< 81 / 393 >

この作品をシェア

pagetop