熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「そうじゃよ。登紀子さんは、それはよくできた付喪神でのぅ。登紀子さんの作る料理は絶品じゃし、登紀子さんの気立ての良さに乗せられて、虎之丞も帰り際にはご満悦になるのがいつもの一連の流れでの」


 つまり、これまでは登紀子さんが虎之丞を手のひらの上で転がしてきたということだろう。


「じゃから、今回も虎之丞が文句を言い出したら登紀子さんに諌めてもらって……」


 と、そこまで言ったぽん太は不意に言葉を止めると、目を見開いた。


「そ、そうか、そうじゃった……!」


 そして何かを思い出したかのように焦り始めると、手に持っていた湯呑みをポン!とどこかに消してしまう。

 
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