熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「だけど万全を期すって、一体どんな方法で……?」
「それは……のぅ?」
「はい……そう、ですねぇ……」
案の定、花の問いかけに、ぽん太と黒桜は腕を組んで押し黙った。
つまり今すぐ解決策は見つからないということだ。
煮えきらない様子のふたりに、花の胸には不安が積もる一方だった。
「ハァ……。とりあえず、まずは食事だろう」
「え……?」
そのとき、今の今まで三人のやり取りを静観していた八雲が口を開いた。
「虎之丞は、とにかく食にうるさいからな。好物を用意して、虎之丞が満足するものを提供するのが一番の解決策だ」
「虎之丞さんが、満足するものを……」
八雲の言葉にハッとして顔を上げたぽん太と黒桜は、途端に表情を明るくして声を上げる。
「そうじゃな、八雲の言うとおり! まずはそれじゃ!」
「はい、はい……! そうですよ! 私の宿帳のデータによると、確か虎之丞殿は海の幸がお好きだったはずです!」
目を閉じて、手元でパラパラとページを捲る動作を見せた黒桜は言葉を続ける。