熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
そんなこんなでとりあえず、父の住む静岡市内の実家に帰ることになった花は今、帰る前に失恋&失業旅行でここ、熱海の地を訪れていた。
「はぁ〜……これから、どうしよう」
幸い、幼い頃からの貧乏生活のおかげで倹約が染み付いており、貯金の残高はそこそこある。
だけど生活のためにはすぐにでも新たな職を見つけなければならないし、良い年をしていつまでも実家にお世話になるわけにもいかないと花は頭を悩ませていた。
「消えたい……」
父にはまさか不倫未遂事件に遭ったとは言えず、職場で起きたトラブルの責任を取るために自主退職することになったと報告をした。
花が次の職が見つかるまで実家のお世話になってもいいか尋ねたところ、父は快く受け入れてくれたが、声のトーンが大分下がっていたことに娘の花が気づかないはずもない。