熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「えっ! 八雲さん、何買ったんですか⁉」
「……なんでもいいだろう。……ああ、そろそろバスの時間だ。行くぞ」
そう言うと、八雲は改めて店主たちに頭を下げると、さっさと踵を返して行ってしまう。
自己中心的にも程がある。そう思いつつ、花は八雲に従うしかなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……! すみません、ありがとうございました……!」
慌てて花も店主のご夫婦に頭を下げて、ワゴンをあとにした。
八雲と花がバス停に戻ってすぐ、バスが到着して、ふたりは揃って乗り込んだ。
目的地はつくもの最寄りのバス停である、熱海サンビーチだ。
花は自分に散々何も買うなと言っておいて、自分はちゃっかり何かのお土産を買った八雲を、恨めしそうに眺めた。
八雲はあのワゴンで、一体何を買ったのだろう。
そう思った花は再度八雲に尋ねようか試みたが、どうせ教えてはもらえないだろうと諦めた。