熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「あ、あの……いくつか、質問してもいいですか?」

「なんじゃ?」

「色々ツッコミどころはあるんですけど、あの、その……あなたは、たぬきですよね? 間違っていたら申し訳ないんですけど、サンビーチで私の愚痴を聞いてくれた信楽焼のたぬきの置物ですよね?」


 花が思い切った質問をすると、たぬきはキョトンと目を丸くしてから「そうかそうか」と何かを思い出したかのように頷いた。


「すまん、お前さんが急に逃げ出してしまったから、まだなーんも説明しとらんかったな」

「す、すみません、ビックリして逃げ出しちゃって……」

「いやいや、わしも悪かった。うーん、しかしどこから説明したらええかのぅ。とりあえず、花の質問の答えからかの。如何にも、お前さんが今言ったとおり、わしは信楽焼たぬきの"ぽん太"じゃ」

「ぽん太……?」


 なんて可愛らしい名前だろう。

 けれど、モフモフの身体と尻尾、そしてぽてっと前に出たお腹という見てくれに、よく合った名前である。

 
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