熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「まぁ幸い女性同士じゃし、泊まる部屋が増えたり変わるわけではないのなら、人ひとり増えたくらいでは屁でもないら」
「はい、ぽん太殿の仰るとおりで。これまでも急な人数変更などはどうとでも対応してきましたので、今日は安心して"おふたり"でつくもにご宿泊ください」
「ちょ、ちょっと待ってください……!」
さも当然のごとく話しを進めるぽん太と黒桜を前に、花は慌てて止めに入った。
「わ、私は今日ここに泊まるなんて一言も言ってません……! ここにはただ、熱海駅への近道を聞きに来ただけなんです! だから私は、ここに泊まるつもりはさらさらありませんので帰らせていただきます‼」
花が断言すると、何故かぽん太と黒桜があからさまに落胆したような顔をした。
「そうだ。この女の言うとおり、こいつはここに道を聞きに来ただけで、泊まる予定などなかった。だったらさっさと来た道を辿って、現世にひとりで帰らせるべきだ」
はじめて八雲と意見が合致した、と花は思った。
けれどそんな八雲に対して、ぽん太と黒桜は焦った様子で反論する。