熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「ん、ん〜〜!」
すると、うまい!と、言うのも惜しいほど、一口で鯵の旨味が口いっぱいに広がった。
(なにこれ……! 鯵の甘みが醤油の味に負けてない……!)
プリプリの鯵は噛めば噛むほど旨味が増して、食欲を増進させた。
たまらず、すぐに手を伸ばした花は、次に薬味の生姜を乗せてまた一口頬張った。
(お、美味しい〜〜〜っ)
生姜のピリとした辛さと鯵の旨味が絶妙にマッチする。
胡麻の風味も鼻から抜けて、スーパーで売っている一パック398円の鯵のたたきとは、まるで別物の味だった。
「こんなに美味しい鯵の海鮮丼、初めて食べました……」
八雲がよそってくれた一杯をペロリと平らげた花は、ふぅ……とひと息ついて幸せを噛み締めた。
「あの、それで……二度目はどうやって食べたらいいですか?」
こうなったらもう、花の食欲は止まらない。
八雲が先程、つくものまご茶漬けは三度楽しめると言っていたことを忘れない花は、目を輝かせながら八雲を見つめた。
すると八雲は空になったお茶碗を手に取って、また先程と同じように鯵のミニ海鮮丼を作ると花の前に静かに置いた。